ケース別の売却理由

相続したマンションを売る場合の流れと注意点

相続したマンションを売る場合の流れと注意点

大切な家族との別れなどに伴って発生するのが相続の問題です。特に資産的価値が大きいマンションを相続した方からは『自分はもう住んでいないし、所有していても仕方がないから売却を検討している』という声もよく聞かれます。

しかし、一般的な方は相続したマンションの売却方法や流れ、注意点なども知らないため、しばらく放置してしまうというケースも少なくありません。マンションなどの不動産はそのままにしておくと税金などもかかってくるため、今後使い道がない場合には速やかに売却の手続きを進めたほうが自身の負担も軽くなります。

そこで今回は相続したマンションを売る際の流れや注意点などをまとめましたので解説したいと思います。

相続したマンションを売却する時の流れ

相続したマンションを売却する際には査定依頼を出す前にいくつかの手続きをしておく必要があります。ここでは相続したマンションを売却する時の基本的な流れを見てみましょう。

1. 遺産分割協議書を作成

マンションなどの不動産は被相続人(亡くなった親など)の名義のままでは売却することはできません。よって、実際に売りに出す前に名義人の変更が必要となります。そこでまず最初にしておかなければいけないのが遺産分割協議書の作成です。

遺産分割協議書とは相続人が複数いた場合(兄弟、姉妹など)に『マンション売却で得たお金をどのようにして分けようか?』という取り決めが記載された書類となります。この協議があることで後々のトラブルも防ぐことが可能となるため、スムーズにマンション売却を進行させたいという方は事前にしっかりと話し合いをしておくことが大切です。

またこの協議においては名義人の代表者を1人決めておきましょう。本来であれば所有権は複数名義でも可能ですが、複数の場合だとマンションの売買契約において全員分の署名や捺印が必要となり、相続人も仲介業者も余計な手間がかかります。

そのため、登記上の名義は代表者1人のみにしておき、遺産分割協議書に相続財産を売却し現金化したあとに相続人へ分配する『換価分割(かんかぶんかつ)』と『売却代金の分配』を行うことを記載しておく形を推奨します。この方法であれば登記上の名義は1人であっても売却代金を平等に分配することが可能です。

ちなみにこの遺産分割協議書は相続人が自分だけしかいないという時には不要となります。また、被相続人が生前に書いた遺言書が遺されており『マンションを誰に引き継がせるか?』といった詳しい内容が書かれている場合にも遺産分割協議書を作成する必要はありません。

2. 相続登記を行う

遺産分割協議書を作成したら、マンションの所有権を変更するために法務局で手続きを行います。これを『所有権移転登記』といいますが、この手続きが完了して初めてマンションの売却を行うことが可能となります。所有権移転登記までの流れですが、書類の作成なども含めて自身で行うことも可能です。

しかし、相続の種類によっては手続きまでの流れが複雑であったり、名義変更に関する知識がまったくないという方もいます。このような場合は自身で必要書類の準備を進めても時間がかかることが予想されるため、司法書士や弁護士といった専門家に相談するのがおすすめです。

3. 査定依頼~引渡し

名儀変更が無事に完了した後は一般的なマンション売却の流れと同様です。

まずは売却のサポートをしてくれる不動産業者を見つけて、正式契約に至ったら売り出し開始です。ここで購入希望者が見つかれば売買契約を締結して、売却代金の受け取りおよび物件の引渡しを行って売却完了となります。

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4. 遺産分割協議書に従って売却代金を分配する

相続したマンションを売却したことで得た代金は事前に作成した遺産分割協議書の内容に従って分配します。この不動産などの売却で得た代金を相続人で分け合うことを前述の『換価分割』といいます。

また、代金を分配することで『贈与税が発生するのでは?』と心配される方もいますが、事前に遺産分割協議書に換価分割の記載をしておけば、贈与税が発生することを防ぐこともできます。この点は分配金を損しないように覚えておきましょう。

5. 譲渡所得税の申告および納税

マンションを売却して利益が発生した場合には譲渡所得税が発生します。これは売却代金を受け取った相続人全員に対して課せられる税金となります。譲渡所得の申告および納税はマンションを譲渡した年の翌年2月16日~3月15日までの間に行う必要があります。

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相続したマンションを売却する際に覚えておきたい相続税

相続したマンションを売却する際に覚えておきたい相続税

相続したマンションと通常のマンションを売却する時の最も大きな違いはやはり相続税の発生の有無です。相続税とはその名のとおり、故人が生前に所有していた財産を家族などが引き継ぐことで発生する税金のことです。

この財産の引き継ぎとはマンションなどの不動産の他にも現金、預貯金、宝石、有価証券などがありますが、相続税はこの全財産を合計して算出されます。つまり、相続税の最終決定額はマンション以外の他財産があるかどうかによって全く異なるというわけですね。

そのため『相続したマンションを売却した時にかかる相続税はいくらですか?』という質問がよく見られますが、これはマンション以外に引き継ぐ財産の評価額によって異なるため、正確な数字を出すことは不可能です。

ちなみに『財産がいくら以上あれば相続税の対象になるの?』という疑問の声も多いですが、こちらは事前にある程度把握することはできます。相続税は財産全てに税金がかかるわけではなく、基礎控除が存在します。

相続税の基礎控除とは?

基礎控除とは、相続財産から一律で差し引かれる控除のことです。簡単に説明すると『相続遺産がこの金額までであれば、税金が発生することはありませんよ』というものです。この基礎控除があることで相続人が負担する税金を大きく軽減することが可能であり、実際に税金を支払わなくて済む方も非常に多いです。

相続税の基礎控除額の計算方法は以下のとおりです。

【相続税の基礎控除額計算方法】
3,000万円+600万円×法定相続人数=基礎控除額

相続財産の評価額が基礎控除額の計算で出された額以下であれば税金の支払いが免除されます。

ちなみに法定相続人数が3人の場合で計算すると基礎控除額は4,800万円となります。

3,000万円+600万円×3人=基礎控除額 4,800万円

つまり、遺産がマンションのみであり、そのマンションの評価額が4,800万円以下であれば相続税を支払う必要はないということです。また、これはマンション売却における相続税のややこしいところでもありますが、課税対象となるのはマンションの売却代金ではなくマンションの評価額です。

マンションの評価額とは?

この点もよく『売却価格から相続税が決定される』と勘違いする方がいますが、相続税と実際のマンション売却で得た代金は全く無関係のため、これから相続したマンションを売却する方は覚えておきましょう。

マンションの評価額を計算するのは専門の不動産鑑定士や税理士となります。評価額算出方法は土地と建物で分けられて計算され、その後自身が所有する持分割合を乗じて算出するのが一般的となっています。

相続税の課税対象者について

ちなみにこの相続税ですが、平成27年に相続税課税対象となったのは全申告者の約8%ほどとのことです。そのため、基本的に相続税はよほどの資産家でない限りは心配する必要はないと見ることもできます。

ただし、平成27年1月に基礎控除額が引き下げられるなど相続税の改正が行われたため、今後は課税対象者が増えることが予想されています。この改正は今後マンション売却を行う方も覚えておきたい点であり、特に資産が5,000万円~1億前後あるという家族は注意しておきたいポイントです。

相続税を経費にできる期間

前述のように相続したマンションを売却すると譲渡所得税が各相続人に課せられることになります。この譲渡所得税もできれば抑えたいというのが相続人の本音ですが、実は相続マンションの売却でしかできない税金を軽減する方法があります。

それは相続したマンションを相続発生から3年10ヶ月以内に売却することです。譲渡所得税の算出方法には取得費と呼ばれるものが含まれています。取得費とはマンションを購入する際にかかった費用のことであり、マンションの購入代金の他にも不動産業者に支払う仲介手数料なども該当します。

そして相続したマンションを3年10ヶ月以内に売却することで、特例として相続税の一定額を取得費に加算できる仕組みがあります。譲渡所得額は売却代金から取得費などを引いた額で算出されるため、取得費が大きければ大きいほど支払う税金も少なくすることができます。

この特例により、譲渡所得を大幅に軽減できる可能性もあるため、税金で自身の取り分が減らされるのはできるだけ避けたいという方は3年10ヶ月以内、もしくはマンションの資産価値が下がらないようにもっと早めのマンション売却をおすすめします。

相続したマンションを売却する時の注意点

よくテレビなどでも『遺産トラブルで家族の仲が崩壊!』といったものを見かけますが、やはり大きなお金が動く遺産相続関連の手続きなどは慎重に進めていく必要があります。特にマンションを共有で相続すると『自分は売りたいけど、〇〇が納得してくれない』といった意見や思惑の違いがよく出てきます。

そのため、マンションの相続をする時にはあらかじめ法定相続人全員から『今後マンションをどうしたいか?』といったことをしっかり話し合いましょう。また、マンションを売る、売らないで意見が対立した場合にはマンションは自分の分、預貯金は〇〇の分、〇〇は宝石類といったように財産の区別をしっかりと行っておくことが大切です。

相続したマンションを売却する際は慎重に手続きを!

今回は相続したマンションを売却する時の流れや注意点を解説しました。相続マンションの売却では法定相続人が複数人いる場合は、遺産相続のトラブルの原因にもなります。

そのため、売却前に遺産分割協議をしっかりと行うことが非常に大切です。この協議が上手くまとまれば、後は通常のマンション売却の流れとほぼ同じであるため、余計なトラブルが起きる可能性は低いでしょう。

また相続人全員が少しでも多くの分配金を手にするには、実際に売却を担当する不動産業者選びもしっかりと行わなければいけません。仲介業者選びも遺産分割協議と同じぐらい大切な要素です。

1社のみに見積りを依頼するのではなく、必ず複数の業者に見積り依頼を出すことが重要です。現在、相続マンションの売却を検討している方はぜひ参考にしてみてください。